【ブログ】不動産を利用した節税スキームの行方2026

 不動産を利用して相続税を少なくする節税スキームができなくなるというニュースが現実となっている今日、近年の税制改正に加えて2026年度税制改正で更なる見直しが予定されています。

 3月の年度末までに法案が通るかどうかは微妙な状況ですが、内容的にはほぼ確定している感じですので今後の行方を解説します。

節税スキームの仕組み

 相続税の節税は、実際の換金価値と相続税評価額の差額を利用したものがメインとなっています。低く評価された分だけ相続税は少なくなります。換金しないことを前提とすれば本当の節税とは言えないのかもしれませんが、相続税を少なくする目的は達成できます。

マンションの相続税評価の基本

 マンションの評価は土地と建物をそれぞれ分けて評価します。マンションは都市部に多いので、土地については路線価によりマンション敷地全体の評価をして、敷地の権利の割合でその部分の評価を計算します。
 建物については固定資産税評価額をベースに評価しますが、こちらの方は2017年に既に改正が入っており、高層階と低層階の評価に差ができています。

2024年度税制改正(タワマン評価の新ルール)

 この2年前の改正によりそれまでの評価に特別な補正率をかけることにより評価することになりました。タワマン改正といわれていますが実際は3階建て以上のマンションは対象となります。
 補正率が1.0なら増減無しですが、1.5なら評価が1.5倍になります。
【率の各要素による影響】
 ①築年数 ・・・ 築浅であるほど補正率が高い
 ②総階数 ・・・ 階数が多いほど補正率が高い
 ③所有する階 ・・・ 所在階が上層階であるほど補正率が高い
 ④敷地権割合 ・・・ 土地の持分が小さいほど補正率が高い

<参考>
国税庁HP「タックスアンサー№4667 居住用の区分所有財産の評価」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4667.htm
居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書
(エクセルファイルをダウンロードすれば実際に計算できます)

2026年度税制改正(貸付不動産の評価方法の見直し)

 不動産は貸付用のものは自分の居住用のものより更に評価が低くできることを利用した節税スキームで、今回の改正では相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産は通常の取引価額(取得価額をベース)で計算することになるようです。
 具体的な計算方法は明示されていませんが、いままでの相続税評価額との差額による節税スキームはできないことになります。
 これは、相続税対策等で課税時期に近い時期に行った行為は意図的に税金を少なくする目的だと考えますという国の方針を示しています。
 今回の税制改正では更に一定の不動産小口化商品については取得時期に関かかわらず通常の取引価額(そのときの時価)で評価をするとのことです。

節税に関する国と納税者の争い

 税務に関する裁判は以前からありますが、通常の裁判とは少し違った趣があります。
 それは、直感的に違法性が見えにくいからというところと、国の訴訟担当メンバーは会計・税務のプロフェッショナルチームなのに対して納税者側は弁護人も含めて会計・税務の専門家は少なく、裁判官側も知識や経験が不足していることが多いところが影響しているのかもしれません。
 過去の判決例でも最高裁まで争った場合は国がほとんど勝っている印象です。
 最高裁令和4年4月19日のタワマン節税裁判も国が勝ちました。

租税回避行為は適法だけど認めない

 様々な行為の目的が「租税回避行為」目的だとしても違法でなければ国もダメとは言いにくいところですが、日本以外の諸外国では既に租税回避行為は禁止されています。
 近年の税制改正で、国としては個別事例対応でその方向性を明らかにしたいのではないかと考えると、今後租税回避行為自体が難しくなる方向に進むと思われます。

まとめ

 法人は原則的には利益を追求するために設立される人格ですから、税負担は経済活動上最小限にしたいと思うのが自然です。ただ、人間(自然人)は個々の利益のみを追求することを動機として行動するばかりでは社会生活を維持することは難しくなります。
 無駄な税金を納める必要はありませんが、節税目的のみの行為は意味が薄れていくのかもしれません。
 私個人的には、相続税・贈与税は無くても良い税目の一つと思ったりしています。

この記事を書いた人

山内晃
山内晃KFSC理事 税理士、ファイナンシャルプランナー
専門分野

法人税、所得税、相続税等の税務全般、会計コンサルティング

主な資格

CFP®・1級FP技能士、税理士、日本商工会議所簿記検定1級

略歴

早稲田大学卒業後、日興證券を経て現職。税理士試験合格後は所属税理士として登録。20年以上にわたり、法人・個人に対する税務及び会計等の相談業務に従事。税理士事務所勤務(所属税理士)。簿記論、財務諸表論、法人税法、所得税法、相続税法の5科目合格。