【ブログ】65歳以上で働くと、厚生年金が停止になる場合がある
「在職老齢年金」という仕組みがあり、働いていると厚生年金が停止になる場合があります。
その停止となる要件の中に、「えっ、なぜ?」と思わず思ってしまう条件があり、昨年、65歳になった私が自分事として驚いたことがありました。
厚生年金の停止をどう受け入れるか、年金の繰り下げをすべきかどうかについて考えたことを共有いたします。
停止の要件は、「給与+老齢厚生年金が50万円を超えること」
要件の一つである「給与」なのですが、「給与」と言えば、厚生年金を受給している今現在の給与のことと思うでしょう。じつは、「給与」には、「その月以前の1年間に受け取っている賞与の12分の1」を含むのです!?
もし、前年は、正社員など賞与を受け取る立場であった場合、上記の「その月以前の1年間に受け取る賞与」が、停止要件の給与に加算する必要があるのです。
厚生労働省の統計が想定している賞与は、年間3.6ヶ月分であることを、統計の中身を分析していて気が付きました。(肌感覚でも、一般的な賞与月数は、そのくらいでしょう)
700万円の年収の方であれば、約160万円。1000万円の年収の方であれば、約230万円の賞与となります。
これらの12分の一。約13万円~19万円という金額が、停止要件の「給与」の一部となるのです。
今月受け取る給与だけでなく、その前の年の賞与が加算されるのです。
「今の給与+過去1年間の賞与の12分の1+老齢厚生年金」がいくらか?
老齢厚生年金の受給額は、人により異なりますが、その多くの方は、月10万円~15万円程度でしょう。契約社員としての給与は、正社員時代よりかなり少なくなる方が多いので、労働時間によっては、契約社員としての給与と厚生年金の受給額を足しても、50万円にはならない方がいるでしょう。
しかし、前年に賞与をもらっていたらどうなるか。上記の月当たりの賞与額を足すと50万円を超える方が出てくるのです。(私は、この条件に当てはまった一人でした。)
停止になるなら、厚生年金を繰り下げればよいか?
繰り下げは対策にはなりませんので、注意してください。
なぜならば、停止になった厚生年金は、年金受給の対象から消滅して、繰り下げで先送りする年金の対象にならないのです。
「前年の賞与」の停止への影響は、賞与を受け取ってから一年経つとなくなりますので、半年~1年経ったら、賞与による停止額の増加の影響はなくなります。 停止で減額になる厚生年金の影響は大きいといっても、仕事を続けて、厚生年金保険料を払い続ければ、後年の厚生年金受給額が少しづつ増えていきますので、人生100年と考えれば、停止となっても仕事は続けるのが得策といえるケースが多いでしょう。
加給年金に注意
また、配偶者が、年下の方の場合は、さらに注意が必要です。配偶者が年下の場合、加給年金の受給ができて、その年額は、およそ40万円というかなり大きな金額です。
厚生年金の繰り下げをすると、加給年金を受け取れないのです。
ですから、加給年金の受給を考えれば、厚生年金の繰り下げはするべきでないということになります。
停止を避けるために、給与を少なくするのが得策か?
厚生年金の停止を避ける方法が一応あります。それは、労働時間を減らし、給与を少なくするという方法です。
特に、契約社員としての労働時間を週20時間未満にすれば、厚生年金保険への加入権がなくなるので、その範囲で働くならば、厚生年金は停止になりません。
ただ、厚生年金保険に加入しないと、健康保険料が増えるなど、増える支出があるので、停止額だけに着目するのではなく、広い視点を持って検討することをお勧めします。
結論としては、厚生年金が停止になっても、週20時間以上の契約とするのが良い
選択すべき道は人それぞれですが、少なくとも厚生年金が停止になるからという理由だけで、労働時間を短縮するのは、決して最善の道ではないと考えます。
人生100年をアクティブに過ごすために
仕事を続けるということは、社会とのつながりを続けるということの近道でもあるからです。
人生100年の時代です。60~65歳は、人生100年の中では、まだ道半ばです。退職後は、「第2の社会人人生の始まり」と考えるべきです。
決して、「余生」ではないのです。退職後、35~40年という年月は、余生にしては長すぎます。
いかにして、活力のあるアクティブなシニアとしての生活を続けるかを考えていきましょう。
この記事を書いた人
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専門分野
ライフプランニング、資産形成(NISAを使ったつみたて投資、個別株、投資信託、ETF)、公的年金・企業型確定拠出年金・iDeCo、生命保険。個人としての金融資産運用歴は30年以上、投信を使ったつみたて投資20年以上、外国株口座での取引も経験を有する。
主な資格
CFP®・1級FP技能士