【ブログ】人生100年時代  ~「女性の年金」と「女性の働き方(賃金)」を考える

 高齢単身世帯の女性の貧困が問題視されてから久しいが、その主たる原因の一つに受け取る年金額の低さがあると言われています。今回は、この女性の低年金の要因となる課題について考えて行きたいと思います。

平均年金額っていくらですか?

 令和6年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和7年12月発表)によると、年金の月額は表1の通りで、国民年金では女性の方が男性よりも4,013円少なく、厚生年金では女性の方が男性よりも58,554円少ないと言う結果になっています。年額に換算すると国民年金では48,156円、厚生年金では702,648円となっています。

男女でこのように大きな格差があることをみなさんは意識したことがありますか?

表1.令和6年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況」

出典:厚生労働省 令和6年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況」

https://www.mhlw.go.jp/content/001617995.pdf

国民年金は年齢や性別によらず保険料が一律であることを考えると、年金額の差は免除や納付期間に男女間で若干の差があるのかもしれません。

厚生年金では、保険料が月収(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)により算出され、また年金額は月収(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)及び勤続年数の長さによって決まるため、男女間の賃金格差や勤続年数の長さなどが年金額格差につながっていると考えられます。

ここで特に意識してほしいのは、「月収(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)」の男女間格差が将来の年金額にも大きな格差を生じてしまうと言うことです。併せて、この男女間の賃金格差は働き方と深く関わっていると言うことです。

女性と男性の働き方が賃金格差につながっている

(1)ライフスタイルの変化~共働きが当たり前の時代に~ 

 戦後から働く女性は徐々に増加傾向にありましたが、1990年代半ばには共働き世帯数が片働き世帯数を逆転し、今現在は女性にとって、妊娠・出産を経験しても「働き続ける」ことが当たり前の時代となっています。

 では、働き続ける女性が増えたのになぜ男女間で大きな年金格差が生まれてしまうのでしょうか。 その大きな要因の一つが働き方にあるといえます。

共働き世帯数等の年次変化

出典:厚労省

https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/20/backdata/1-1-3.html

(2)女性の働き方は非正規労働であることが多い

 図1から、正社員として働く女性の割合は勤続年数の伸びとともに減少し、一方、非正規雇用で働く女性は増えていることがわかります。また、どちらの働き方であっても勤続年数とともに男女間の賃金格差が縮小せず、むしろ広がる傾向にありことが見て取れます。

 特に問題なのは、非正規雇用で働く場合、女性の賃金は勤続年数が伸びてもほとんど上がらないということです。仮に社会保険に加入できる条件をクリアしていたとしてもこれでは男女間の年金額格差につながってしまうことが容易に想像できます。

図.1 勤続年数別、正社員と非正規労働者の所定内給与の推移

出典:内閣府男女共同参画局「男女間賃金格差について」

https://www.gender.go.jp/kaigi/renkei/kikaku/55/pdf/1.pdf

(3)男女間賃金格差の国際比較~女性の賃金は世界的に見ても低い~

 男女間の男女間の賃金格差をフルタイム労働者で見ていきましょう。図2は、OECD加盟国の比較となっています。

 日本は2024年の名目GDPがかろうじて第4位とはいえ、経済大国であることに変わりは無く、それにもかかわらず女性の賃金は未だ男性の8割を切る状況となっています。

図2. 男女間賃金格差の国際比較

出典:男女共同参画白書(令和7年)

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r07/zentai/html/zuhyo/zuhyo02-03.html

職業選択が賃金格差につながっている

財務省のシンクタンクである財務総合政策研究所の「仕事・働き方・賃金に関する研究会―

一人ひとりが能力を発揮できる社会の実現に向けて」報告書(令和4年6月発行)(https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2021/shigoto_report.html)によると、男女の賃金格差を「職業とタスク」という2つの指標で分析しており、男女間の賃金格差の要因として以下の3点を指摘しています。

①男性と女性は異なる職業に従事しており、この傾向は1990年から2015年にかけて大きく変わっていない。ただし20代の若年層については男女の職業分布は以前よりも近づいている。

②女性は男性に比して高度な技能を要する非定型タスクに従事していない。こうしたタスクに従事する女性は徐々に増加しているが、他方でさほど高度な技能を要しないタスクに従事する女性も増加するという分化が進んでいる。

③男女の従事する職業とタスクの違いは男女間賃金格差を一定以上説明する。とりわけ子どもを持つ男女間の賃金格差が職業とタスクの違いによって説明され、子どもを持つ女性が難易度や要求される技能の高い仕事に従事できていない可能性を示唆する。

 男女雇用機会均等法が施行されたのが1986年、すでに40年が経過しています。しかしながら、職業選択の機会均等が実は思うように進んでいなかったこと、また、育児休業法が男性の育児参加を促す方向で改正されながらも依然として女性に負担がかかっている事実などを改めて突きつけられる結果だと言えるでしょう。

私たちが認識しておきたいこと

女性の年金問題を「男女の賃金格差」の視点から見てきました。

今回はあまり深掘りすることはできませんでしたが、男女雇用機会均等法施行から40年が経過しているにもかかわらず、女性を取り巻く雇用環境はまだ十分に改善がされているとはいえず、女性の職業選択の機会も十分に広がったとは言えない状況が見えてきました。また、育児休業法などの改正が何度もされているにも関わらず出産・育児などの女性を取り巻く環境は依然として厳しく、その状況が男女間賃金格差や勤続年数格差などにつながっていることも見えてきました。

そして、男女間の賃金格差が将来受け取る年金額に大きな影響を及ぼすであろうことも容易に理解できたことでしょう。

統計的に男性よりも長寿命である女性にとって年金問題は死活問題であるといっても過言ではありません。つまり、人生100年時代を生きる私たちにとって高齢期の女性の貧困を考える時、女性の働き方(賃金)は決して無視できず、むしろとても重要な要素であることがわかったと思います。

これから社会に羽ばたこうという女性のみなさんには、特に職業選択と賃金、そして将来受給できる年金について考えてほしいと思います。

ちょっと考えて見ようと思い立った時には、私たちFPに気軽に相談していただけるとうれしいです。「キャリアとマネー、そしてライフ」を考える際の伴走者になれると思います。

この記事を書いた人

伊東 雅代
伊東 雅代KFSC所属 ファイナンシャルプランナー
専門分野
ライフプラン

主な資格
AFP、国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー

略歴
電機メーカーに技術者として入社、通信機器類のハードウェア設計部門で品質管理や電子部品の設計に従事。その後、労働組合専従役員として活動し、地方公共団体及び国の審議会・協議会・分科会などの委員も務める。労働系シンクタンクで女性の労働運動の研究などにも関わる。2018年に会社に戻り、社員のキャリア研修の企画などに従事。