【ブログ】相続対策で案外と知られていない土地境界確認と確定測量の必要性

土地の境界を巡るトラブルは、高齢の土地所有者の相続時や売却時に発生しがちです。トラブルを未然に防ぐためには、隣地所有者との合意による境界確認と、法的効力を持つ確定測量が欠かせません。本記事では、境界確認と確定測量の具体的な手順や注意点を解説し、土地売却や相続対策における重要性を考察します。

土地境界確認と確定測量とは

土地の境界をめぐって隣地とトラブルになることがあります。
特に土地所有者が高齢になり土地売却や相続の時にトラブルが発覚する場合があります。土地境界確認とは、そのようなトラブルに発展しないように隣地との土地所有者同士で境界線を合意の上、明確にすることです。
ただしお互いの合意だけでは法的効力が限定的になってしまいます。
そこで、法的効力を補完するために土地測量を行うことを確定測量といいます。
具体的には、土地の正確な境界を専門家(土地家屋調査士)が測量機器を使って調査し境界ポイントへ杭や標を土地に埋め込み、その結果を図面化します。
費用は数十万程度かかりますが、特徴として隣地との境界確認をしたうえで「境界確認書」や「立会確認書」を測量図面と合わせて作成し、必要に応じて法務局での登記を行います。

確定測量における境界確認には、隣地の協力が必要です

境界確認には隣地所有者との合意が必要です。合意が得られないケースとして以前より隣地所有者と不仲または隣地所有者がどこに住んでいるか不明。あるいは高齢で認知症という事もあります。
やはり、最近多いのは隣地所有者が亡くなり、空き家状態で相続人が不明(不動産登記簿への相続登記が未了)というケースです。
いずれの場合も隣地所有者と合意が得られない場合は確定測量が完了できません。そのような場合は、筆界特定制度や訴訟をするという事もできますが費用と時間が掛かります。

売却では土地境界の確定していない土地は負動産予備軍

土地を売却する場合において確定測量が未了のケースが良くあります。土地を購入する側からすると境界が確定していない土地を購入するのは非常に不安になります。何かトラブルは無いか?実際の土地面積は登記簿より狭いのではないか?など考えてしまいます。また境界がはっきりしていないと新たに建築をする場合に必ずしも確定測量は必要ではありませんが、新たな土地の購入者と隣地所有者との間で境界線に対する認識の違いがあると互いに異を唱えるようなトラブルになり工事がストップしてしまう可能性もあります。
従って土地売却においてそのようなトラブル防止策として確定測量を行うことは必須条件になります。

相続対策としての確定測量

土地の相続対策として考える場合でも土地の確定測量は事前に行っておくことをお勧めいたします。
境界確認を行う作業は非常に時間が掛かります。なぜなら、冒頭でも記したように隣地所有者の協力が必要になります。必ずしも隣地所有者が隣地に住んでいるとも限らず遠方に住んでいる場合やすでに死亡していて相続登記が済んでいないという事も往々にしてあるからです。
確定測量にかかる期間としては、隣地所有者との協議がスムースに完了して、おおよそ、3 カ月程度は必要になります。また、市区町村の公道などと土地が接している場合はさらに時間がかかる可能性もあります。
相続対策として納税資金としての売却、あるいは相続人で売却して換価分割などを予定した場合は相続税の申告期限(相続開始日の翌日から10カ月間)までに確定測量をしたうえで売却を完了させる必要があります。
確定測量未了の土地は想定していた金額よりもかなり低くなってしまう可能性も十分にあります。特に大きな土地を建売業者に売却する場合、購入後に土地を分筆の上、区割りして再販するためには確定測量が済んでいないと土地の分筆ができません。そのため確定測量の済んでいない土地は売却価格に大きく影響されます。
相続開始後に確定測量を行うのでは時間が足りない場合も想定されるため早めに確定測量を行うことをお勧めいたします。

この記事を書いた人

田邊和弘
田邊和弘
専門分野

不動産投資、不動産相続、不動産管理

主な資格

CFP®、宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、CPM®(米国公認不動産賃貸経営管理士)

略歴

(株)巴不動産を経て(株)陽徳不動産(旧社名 陽徳商事)入社、2015年 同社 代表取締役に就任、株式会社陽徳不動産 代表取締役、大田区不動産オーナーの会 代表、中古住宅のあんしん仲介窓口 代表