【ブログ】もしも“おひとり様”が倒れたら!?

 「終生、自宅で過ごしたい」とお考えの“おひとり様”が多いと思います。ただし、“おひとり様”が意識を失って自宅で倒れた場合、死に至るリスクも潜んでいます。更に、入院するのも大変です。安心安全に豊かな老後を過ごすために、どのような備えをしておいたら良いのかを考えましょう。

自宅で倒れたら、誰が助けてくれるの?

 一人暮らしの“おひとり様”が自宅で倒れた場合、「駆け付けてくれる人」がおられるでしょうか?もしも、誰もいなければ、“そのまま誰にも気付かれずに死に至る”こともあり得るでしょう。一人暮らしは、常にこのリスクと背中合わせであることを理解しておく必要があります。

少なくとも、一人で暮らす場合は、何らかの対策を講じておく必要があります。

1.隣近所に頼る

 まず、親しい隣近所の方々に、「時々様子を見てもらうようにお願いしておく」ことが考えられます。ただし、隣近所は“遠くの親戚”よりもずっと機能する場合がある反面、隣近所の方々にも各々の生活があって、常に気を配ってもらえることまでは期待できませんし、都市部では近隣との関係が疎遠になっていることも多いでしょう。

2.親族に頼る

 親族に、毎日定時に電話する(電話してもらう)ことで、安全確認を行い、連絡がない場合は親族が駆けつける、または、119番等の緊急手配をすることが考えられます。ただし、その親族にも生活があり、毎日定時に待機するのは困難でしょうし、遠隔地だと迅速に行動できない場合もあるでしょう。更に、本人の判断力が低下してきて、電話するのを忘れる、電話する能力が衰えることも考えられますし、親族との関係が疎遠になっている場合もあるでしょう。

3.警備保障会社等と契約する

 少々お金はかかりますが、警備保障会社等と“見守り契約”等を締結して、例えば「受領した緊急通報ボタンを身から離さないようにしておいて、倒れてもボタンを押せば警備員が駆けつける」ように手配しておくことが可能です。更に、トイレの前にセンサーを設置して、「24時間トイレに行かなかった場合に警備員が駆けつける」ようにしておくことで、倒れて緊急通報ボタンを押せなかった場合でも、24時間以内には警備員が確認に来てくれる対策があります(これらの場合、玄関にチェーンは掛けず、警備保障会社等が合いカギを預かる取扱いになる)。いずれにしろ、何らかの安全装置を作っておくことは非常に重要です。

“おひとり様”の入院は大変です!

 もしも救急車で病院に担ぎ込まれた場合、入院手続やその後の費用の支払い、転院・退院手続き等は誰がするのでしょうか?

1.身元引受人(保証人)は誰ですか?

 入院時にまず問題になるのが「身元引受人(保証人)の署名押印」です。親族が身元引受人になれば問題ありませんが、身元引受人が見つからない場合、病院側の受入れが問題になることもあります。救急車での緊急入院以外の場合、入院できなくなる事態も考えられます。

 最近は、この身元引受人を引き受ける業者・団体が出てきていますが、相当の費用負担が生じることもあるうえ上に、業者が玉石混交という問題が生じています。

2.入院費用等の支払いや各種手続きは誰がしてくれますか?

 入院中は、入院費用等の支払い、入院中の日用品の購入や家から日用品を持ってくる作業、健康保険負担限度額申請の手続き等が必要になります。支払いについては、本人に判断能力があり、筆記が可能で、手元に財布・クレジットカードがあれば対応できますが、財布等が手元にない、意識が回復しない、せん妄等で判断能力に問題が生じている場合は一寸した支払、日用品の購入等にも苦労することになります。また、役所・銀行等の手続き・交渉が必要なときも困ったことになりそうです。

 これらの問題は、施設に入所する際にも発生します。

まず、安全網を作りましょう

 “おひとり様”の場合、「普段自分でできていたことが突然できなくなり、誰も助けてくれない」リスクがあります。そのため、まずは種々の問題が発生した場合についてのシミュレーションを行い、それに対する安全網を自分で構築しておくことが大事です。

 例えば、健常なうちに信頼できる人や司法書士等の専門職と財産管理委任契約・任意後見契約を締結しておくことも解決策の一つですが(事前に、取引先金融機関が任意後見に対応するのかを確認しておきます)、これだけで全てをカバーできる訳ではありません。いくつかの対策を組み合わせる必要があるでしょう。

この記事を書いた人

小林徹
小林徹家族法制基礎研究所所長
専門分野

相続、民事信託、不動産、金融・資産運用、成年後見

主な資格

不動産鑑定士、 1級FP技能士(CFP®)、1級金融窓口サービス技能士、不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士 、相続カウンセル

略歴

大阪大学卒、東亜大学大学院法学修士。大手信託銀行で経営本部、不動産部門等に従事した後、相続・遺言業務を統括しつつ、民事信託商品の組成にも尽力してきた。
その後、亜細亜大学法学部非常勤講師(信託法担当)、横浜家庭裁判所家事調停委員、横浜市審議会委員を歴任。