日銀のマイナス金利解除が住宅ローンにどう影響する? 

日銀は3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策を含む大規模緩和の解除を決めました。植田総裁は記者会見で「賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきた」と発言して、2007年2月の利上げ以降17年ぶりに実質的な利上げに踏み切ったことになります。日本もやっと金利のある普通の国になったと言えるでしょう。 

マイナス金利政策とは

日銀が金融機関から預かる当座預金の一部にマイナス0.1%の金利をつけることで、 銀行が日銀へ預金を積み上げると損をする環境を生み出し、金融機関が世の中にお金を回すよう促す狙いがありました。しかし導入後、企業への貸出金利や住宅ローンの金利は大幅に低下しましたが、物価上昇や景気回復にはつながらず、金融機関の収益悪化など副作用も表面化しました。 

日本経済はデフレからの脱却と言えるか

一昨年来、ガソリン、電気・ガス代、日常生活品に及ぶ多くの物の物価上昇でインフレの到来を感じ取っていた方も多いと思います。連合が3月15日発表した24年の春季労使交渉の第1回集計で賃上げ率が5.28%と33年ぶりの高水準となり、日銀の目指す2%物価上昇目標が安定的に達成できる見通しとなったと言っていいでしょう。併せてマイナス金利解除を受け、三菱UFJ銀行、三井住友銀行は普通預金金利を0.001%から20倍となる0.02%に引き上げることを3月19日当日に決めています。その他銀行も追随を決めています。今後の金利上昇の気配が益々増してきています。  

住宅ローンへの影響は?


金利が上がるということが、家計で一番に影響を受けるのは住宅ローン金利ではないでしょうか。現在日本では約7割の方が変動金利で住宅ローン返済をしています。住宅ローンの金利は返済中の金利が一定期間や完済まで変わらない固定型と半年ごとに金利を見直す変動型があります。特に変動型金利で借りている世帯は、今後金利が上昇した場合、返済額が増えて家計の支出に大きく影響を及ぼすことが考えられます。 

選択肢は?

10年後、20年後の住宅ローン金利を正確に予想することは誰にもできません。ただ物価上昇率2%が持続され、日銀が金融緩和を徐々に縮小してくれば、変動金利は現在のような1%を切る金利から、2%~3%程度への上昇はあり得ると想定しておくことは必要です。今後の金利上昇は避けられないと考える方は変動金利から固定金利へ変更するのも賢い選択肢の一つです。

以下2つの方法を紹介します

1つ目:今借りている銀行で金利タイプを固定に変更する。金利タイプ変更は多くの金融機関で無料です。他の銀行にとられるのを避けるため希望に応じてくれるでしょう。 

2つ目:住宅ローンを別の銀行で借り換える。ただし借り換える場合は数十万円の手数料がかかります。新たな案件獲得となるので優遇してくれるでしょう。


いずれの場合も現在の変動金利と新たな金利差及び総支払額がどの程度になるか、銀行にシミュレーションしてもらい、自分自身で十分に納得してから手続きを行うようにしてください。 

この記事を書いた人

網野俊
網野俊KFSC副代表理事
専門分野

保険見直し、ライフプラン設計、資産運用

主な資格

CFP®、1級FP技能士、DCプランナー、証券外務員Ⅱ種、生保:トータルライフコンサルタント

略歴

日動火災海上保険(株)を退職後独立系FPとして独立し保険見直しを中心とした個別相談に数多く携わり現在に至る。FPオフィスあみの代表