【ブログ】給料は上がったのに生活が苦しい3つの理由。統計データから見るお金のリアルと対策をFPが解説

「今年の春、ちょっとだけ給料が上がった!」 そんな方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし、どうでしょう。 「給料は上がったはずなのに、スーパーに行くと野菜も肉も高い…」 「外食を少し我慢するようになった…」 「結局、生活は前より苦しいのだけど…」

もし、あなたがそう感じているなら、その感覚は非常に正しいです。今回は、厚生労働省から発表された「毎月勤労統計調査 令和7年8月分結果速報(※)」をもとに、この「給料は上がったのに生活が苦しい」という現象の正体を分かりやすく解説していきます。

(※)厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年8月分結果速報」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r07/2508p/2508p.html

結論:あなたの給料は「実質的に」減っています

いきなり厳しい話ですが、これが現実です。 過去1年間のデータを見てみましょう。

(出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年8月分結果速報」をもとに筆者作成)

例えば、令和7年8月のデータをみてみると

  • 名目賃金:前年同月比 +1.5%
  • 実質賃金:前年同月比 -1.4%

「名目」とか「実質」とか、難しい言葉が出てきましたね。 簡単に言うと、こうです。

  • 名目賃金:あなたの給与明細に書かれている「金額」そのもの。
  • 実質賃金:その金額で、実際にどれだけのモノやサービスが買えるかを示す「価値」。

たとえ給料の額面(名目)が1.5%増えても、物価がそれ以上に上がってしまえば、買えるモノの量(実質)は減ってしまいます。今回のデータでは、名目賃金の伸び率1.5%に対して、物価指数が約2.9%も上がってしまったため、結果的にお財布の中身は実質的に目減りしているのです。

この実質賃金のマイナス、実はもう2年以上も続いています。これが、私たちの生活が楽にならない根本的な原因です。

なぜ?生活が苦しい3つの「犯人」

では、なぜこんなことになっているのでしょうか。犯人探しをしてみましょう。

犯人①:止まらない「物価高」

最大の犯人は、皆さんも日々実感している「物価高」です。 給料が100円上がっても、今まで1,000円で買えたものが1,100円になっていたら、意味がないですよね。むしろ、今まで以上に稼がないと同じ生活が維持できない、という悪循環に陥ります。

犯人②:じわりと効いてくる「労働時間の減少」

「でも、基本給はちゃんと上がったはずだ」という方も多いでしょう。しかし、近年、ワークライフバランスが重視され、「労働時間の減少」、特に「残業時間の減少」が進みました。

(出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年8月分結果速報」をもとに筆者作成)

令和7年8月のデータをみてみると

  • 総労働時間(働いた時間の合計):前年同月比 -2.1%
  • 所定外労働時間(残業時間): 前年同月比 -3.3%

私たちの給与は多くの場合「時給(あるいは月給) × 働いた時間」で決まります。たとえ基本給が上がっても、残業時間が減れば、手取りの総額は思ったほど増えません。

働き方改革で残業が減ること自体は、プライベートの時間を確保できる良い側面もあります。しかし、家計の視点で見ると、これまで残業代を生活費の一部として計算していた家庭にとっては、「見えない収入減」として重くのしかかってくるのです。

犯人③:「会社任せ」「国任せ」の姿勢

物価高も、会社の業績も、私たちがコントロールできることではありません。 しかし、「いつか景気が良くなるだろう」「会社が給料をたくさん上げてくれるはずだ」と受け身で待っているだけでは、残念ながら自分のお金を守ることはできません

実質賃金が2年以上もマイナスということは、この2年間、黙って預金しているだけでは、あなたのお金の価値はどんどん下がっていた、ということでもあるのです。

明るいニュースと、私たちが「今」すべきこと

厳しい話ばかりしてしまいましたが、少しだけ明るい兆しもあります。

  • パート・アルバイトの時給が大幅アップ(前年同月比+3.7%) 人手不足を背景に、非正規雇用の待遇改善が進んでいます。
  • 残業時間が減っている(前年同月比-3.3%) 働き方改革が進み、自分の時間を作りやすくなった、と捉えることもできます。

この「増えた時間」をどう使うか。ぜひ「自分のお金と未来について真剣に考えて対策する時間」に充ててみてはいかがでしょうか?

給料が上がるのをただ待つのではなく、自ら行動を起こす「攻めの家計管理」が必要です。

対策①:家計の「見える化」と徹底的な見直し

まずは基本中の基本、家計の把握です。何にどれだけ使っているのかを把握しないと、削れるものも見えてきません。固定費(スマホ代、保険料、サブスクなど)から見直すのが効果的です。

対策②:自己投資で「稼ぐ力」を上げる

残業が減って生まれた時間で、資格の勉強をしたり、副業を始めたりするのも一つの手です。会社の給料だけに依存しない「収入の柱」をもう一本立てる意識が、これからの時代を生き抜く上で非常に重要になります。

対策③:守りから攻めへ。「資産運用」を始める

そして、最も重要なのが「お金にも働いてもらう」という発想、すなわち資産運用です。

物価上昇(インフレ)に銀行預金だけで対抗するのは、竹槍で戦車に挑むようなもの。新NISAなどの制度を最大限に活用し、投資信託などで長期・積立・分散投資を始めることが、あなたのお金の実質的な価値を守り、育てていくための最も有効な手段の一つです。

まとめ:もう「待つ」のはやめよう

今回は、統計データから「給料は上がったのに生活が苦しい」という現実を解説しました。

物価高の波は、まだしばらく続くと予想されます。 しかし、会社や国がなんとかしてくれるのを待つ時代は、もう終わりました。 これからは、私たち一人ひとりが、自分のお金と真剣に向き合い、学び、行動することが求められています。

この記事が、あなたの第一歩を踏み出すきっかけになれば、FPとしてこれほど嬉しいことはありません。

家計の見直しや資産運用の始め方など、具体的なご相談があれば、いつでもお声がけください。

この記事を書いた人

鍋谷修平
鍋谷修平KFSC所属 ファイナンシャルプランナー
専門分野

ライフプランニング、タックスプランニング、不動産運⽤、金融資産運用

主な資格

1級FP技能士、AFP、宅地建物取引⼠、預かり資産アドバイザー2級、2種外務員資格

略歴

大阪大学卒。日立製作所にて金融システムのSEとして勤務。転職後、ライフプラニング支援システムや不動産査定システムの開発に従事。サラリーマンの傍ら2023年よりFPとして活動中。